不動産鑑定士の資格について
土地、建物等の経済価値を判定し、その結果と価額を表示する『鑑定評価』を行うのが不動産鑑定士。
不動産鑑定士試験は司法試験、公認会計士試験と並び、三大文系難関国家資格と言われています。
こちらでは、
- 不動産鑑定士とはどのような資格か。
- 不動産鑑定士の資格が本当に実践で使える資格なのか。
- 期待できる就職先や年収。
- 資格試験の難易度と必要な学習時間
- 資格取得におすすめの学校・講座
- 資格取得におすすめの本
など、詳しく解説していきます。
不動産鑑定士はどんな資格
不動産鑑定士は、土地や建物の価値の評価、不動産の活用方法や税務対策のコンサルティングなどを行います。
不動産の利用価値や経済環境や政策面の影響などを考慮しながら評価を行うため、高度で幅広い知識と経験が求められるのが不動産鑑定士です。
不動産の『鑑定評価』は不動産鑑定士の独占業務になり、不動産鑑定士以外の者が行えば、刑事罰の対象となります。
不動産鑑定士は認知度は低いものの、不動産の価格を適正な方向に導く重要な役割を担っていると言えます。
不動産鑑定士の受験資格は
不動産鑑定士の資格取得に、学歴・年齢・性別・国籍などの制限はありません。
不動産鑑定士の就職先と仕事内容
不動産鑑定士の就職先は、大半は不動産鑑定事務所です。ただ金融機関・保険会社、不動産会社やディベロッパーなども該当します。
どちらにしろ不動産鑑定士として、不動産の『鑑定評価』とコンサルティング業務を主に行うことになります。
不動産鑑定士の仕事は、大きく分けると公共と民間に分かれます。
公共の仕事としては、次のようなものがあります。
- 国土交通省から依頼される公示価格の評価
- 都道府県から依頼される基準地価格の評価
- 国税庁から依頼される路線価の評価
- 財務省から依頼される国有地の公売評価
- 市町村から依頼される固定資産税評価
- 裁判所から依頼される競売評価
- 国、県、市町村が土地を売買する際の評価
民間の仕事は多岐に渡り、特に大手企業では不動産鑑定士のニーズが高くなっているので、就職に困ることはありません。
今後も富裕層向けや、海外向けなどに展開していく企業などでは、不動産鑑定士はさらなる需要があると考えられます。
将来的には、独立開業の道も開かれています。
不動産鑑定士の収入の目安は
一番気になるのはやはり、不動産鑑定士の資格取得後に実際に働きだして「どのぐらいの収入が期待できるのか…」では無いでしょうか?
不動産鑑定士の収入について、平均的な年収は500万円〜800万円程度。
ちなみに、
国税庁の民間給与実態統計調査結果(平成28年度分)では、給与所得者の平均年収は421万円でした。
つまり、
不動産鑑定士の年収は国内の平均的な収入と比べ、かなり高い水準が見込めるということが言えそうです。
■とある会社の求人例@↓
不動産鑑定士の資格があれば、上記のように高収入が期待できそうです。
また、経験の有無でも収入に差があることがわかります。
■とある会社の求人例A↓
経験を積むことで、さらなる収入アップにもつながりますね。
不動産鑑定士に向いている人は
次に、不動産鑑定士の資格取得にはどのような方が向いているのか見ていきましょう。
難易度が高いため、それなりの覚悟を持って勉強できる人
不動産鑑定士試験は、不動産だけでなく多岐にわたる知識が必要とされます。
記述問題も多いため、かなりの勉強時間が必要です。
デスクワークもフィールドワークも好き
不動産鑑定士は不動産の鑑定評価をするにあたり、役所に出向き情報を確認したり、現地調査を行ったりする必要があります。
それが終わると、データをまとめ、鑑定評価報告書を作成します。
デスクワークもフィールドワークも臨機応変に作業できる人が向いていると言えます。
コミュニケーション能力の高い人
不動産鑑定士は不動産の鑑定評価をするにあたり、関係者へのヒヤリングも必要となります。コミュニケーション能力が高く、お客様との信頼関係を築ける人が向いていると言えるでしょう。
不動産に関する知識を持っている人
もともと不動産業務に携わっていた人なら、資格取得に有利な知識を持っていることになります。
金融や会計の知識を持っている人
不動産鑑定士は不動産に関する知識だけでなく、金融、会計などの知識も必要です。
そのあたりの知識が多少なりともあれば、資格取得に有利な知識を持っていることになります。
細かな作業ができる人
不動産の鑑定評価を行うには、細かい作業が多く、また収集したデータを説得力のあるものにまとめる必要があります。
細かい作業がきちんとできる方が向いています。
不動産鑑定士資格のメリット
次に、不動産鑑定士の資格を取得するとどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
資格の希少価値が高い
不動産業界系の資格の最高峰でもある不動産鑑定士は、需要があるのに不足しています。
就職先が多様・豊富
個人事務所から大手企業まで、不動産鑑定士の活躍の場は様々。
将来的には開業の道も開かれています。
キャリアアップ・転職に有利
すでに不動産業界で活躍されている方でも、不動産鑑定士の資格を取ることで、大きなアピールポイントになります。
ダブルライセンスでさらなる飛躍
公認会計士・税理士等の資格を取得している方が、不動産鑑定士の資格を持つことで、さらなる業務拡大が可能になります。
※公認会計士には、科目免除制度がある
不動産鑑定士の資格情報
ここからは、不動産鑑定士の資格取得に関する詳細情報について、詳しく解説していきます。
不動産鑑定士の資格種類と内容
不動産鑑定士は、国土交通省が所管する国家資格です。
試験内容は以下の通りです。
短答式(五肢択一式マークシート方式)
不動産に関する行政法規 出題数:40問(午前120分)
不動産の鑑定評価に関する理論 出題数:40問(午後120分)
※短答式に合格後、初めて論文式を受験することができます。
論文式(記述式)
【第1日目】
民法 出題数:2問 (午前120分)
経済 出題数:2問 (午後120分)
【第2日目】
会計学 出題数:2問 (午前120分)
不動産の鑑定評価に関する理論(論文問題) 出題数:2問(午後120分)
【第3日目】
不動産の鑑定評価に関する理論(論文問題) 出題数:2問(午前120分)
不動産の鑑定評価に関する理論(演習問題)
出題数:1問(午後120分)
不動産鑑定士の資格試験日
不動産鑑定士の試験日は、年1回。
- 短答式が5月中旬の日曜日(1日間)
- 論文式が例年 7月下旬〜8月上旬 (日曜日を含む土・日・月の連続する3日間)
に行われます。
試験日はその年により異なるので、国土交通省のホームページで確認しましょう。
不動産鑑定士の資格受験料
12,800円(電子申請の場合)
13,000円(書面申請の場合)
インターネットによる申し込みだと、受験料が200円お安くなります。
不動産鑑定士の資格合格難易度
短答式 30%前後
論文式 11〜14%程度
合格率からも、日本で行われている資格試験の中でも難易度が高いと言われるのがわかりますね。
不動産鑑定士の資格短答式免除について
短答式試験については、一度合格すると2年以内に行われる短答式試験を免除され、論文式試験にチャレンジすることができます。
※申請が必要
不動産鑑定士の資格取得注意点
不動産鑑定士試験合格者は、不動産鑑定士の登録をするために「実務修習(研修)」を受ける必要があります。
実務修習は講義や演習に分かれて実施され、期間も1年〜3年コースまであります。
実務修習を修了し、国土交通大臣の確認を受けて初めて、不動産鑑定士として登録することができます。
修了できない場合には、再受習となります。
※実務修習を受けるには費用がかかる
不動産鑑定士の資格を取るには
では実際に、不動産鑑定士の資格を取得するために必要な準備や学習方法について、解説していきます。
不動産鑑定士の資格学習方法
資格取得のための学習方法については、大きく分けて次の3つです。
- 独学
- 通信講座
- 通学講座
それぞれについて見ていきましょう。
独学で資格取得できるか…
短答式については、市販本などを利用し独学で合格することも可能です。
しかし、論文式では独学での合格はほぼ不可能と言われています。
不動産鑑定士の通信講座について
資格取得のための対策講座はいくつかのスクールで実施されています。
講座の期間は12〜18ヶ月と長めです。
空き時間をより有効に、スマホやDVDを用いて学習したいという方、効率よく短期間に知識を習得したいという方には、通信講座がおすすめです。
不動産鑑定士の通学講座について
不動産鑑定士の通学講座についてはいくつかあります。期間は約1年。
ただ、通学講座の場合は日程と場所が決まっているので、都合を合わせる必要があり、仕事をしている方には難しいかもしれません。
不動産鑑定士の講習受講費用はどのぐらい?
費用は、通信の場合で386,000円〜435,000円程度。
通学の場合は、450,000円程度
どちらにしろ、かなりの費用がかかります。
ただ、不動産鑑定士の資格取得は、費用はかかりますが、一生使える資格で、高収入が見込めることを考えると、メリットは大きいと言えそうです。
不動産鑑定士の資格おすすめの本は
次に、不動産鑑定士の資格を独学で取得したいという方のために、おすすめの本をいくつかご紹介します。
不動産鑑定士 短答式試験 鑑定理論 過去問題集 |
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平成23年度からの短答式試験問題を8年分完全収録。 |
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不動産鑑定士 論文式試験 鑑定理論 過去問題集 論文+演習 |
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2006年(平成18年)から2018年(平成30年)までの論文問題+演習問題を収録。 |
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不動産鑑定士の資格について<まとめ>
不動産鑑定士の資格についてや、メリット、取得するためのノウハウをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
不動産鑑定士の仕事は、その豊富な知識を武器に多方面での活躍が可能です。
また、将来的にも仕事が無くなるということはなく、年齢に関係なく働き続けられるので、メリットの多い一生使える資格と言えそうです。
ただ、国家資格としては合格率が低く難易度の高い資格なので、不動産鑑定士になるためにはそれなりの努力が必要です。
一発合格を目指すなら、市販のテキストと併せて通信講座を活用するのもおすすめ。
一発合格が目指せる学校・講座は?
資格取得のための学校や講座は様々あります。
まずは自分に合った講座を比較しながら適切に選ぶために資料請求してみましょう。
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